漢方薬には薬と思って飲まれた危ないものがある? | 薬にまつわる歴史

薬にまつわる素朴なギモン

漢方薬には薬と思って飲まれた危ないものがある?

薬の歴史は長いです。特に中国の漢方薬は後漢時代には薬に関した書物が出されています。しかし、その歴史の中で薬として現代では劇薬とされる物を飲んでいた人物がいました。有名な所では中国最初の皇帝、秦の始皇帝です。


不老不死の秘薬を求めた始皇帝

始皇帝の死因は今のところ解明されたわけではありません。しかし司馬遷の史記によると始皇帝は不老不死の方法を探し求めていたことが記録されています。その中には徐福という人物に東の果てにある島にその方法を求めて探し行かせたという話もあります。

ちなみにこの東の島は現在の日本と言われており、日本各地には徐福伝説として伝わっている地域もあります。そんな始皇帝が不老長寿の薬として飲んでいたものの中に公害病の一つ、水俣病などで有名な水銀が含まれていたそうです。


不老長寿の薬は毒物だらけ

当時、始皇帝が飲んでいたものは丹砂という水銀の化合物に雄黄・吡石というヒ素を含んだ化合物を混ぜたものを飲んでいたそうです。それぞれ名前を聞いてわかる通り人間が飲めば命に関わる危険な薬ばかりです。始皇帝はこれが原因で死んだのではと言われています。始皇帝以外にもこのような薬を飲んで死んだと思われる皇帝はその後もいます。秦から500年ほどたった晋の時代の皇帝哀帝は同じような薬を飲んで25歳で亡くなっています。

これはその後も長く続けられており、遣唐使で有名な唐の時代では名君として歴史に名を残した二代皇帝太宗もこのような薬が原因で亡くなっています。しかも唐代の皇帝22人のうち6人はこの薬の水銀中毒で亡くなったそうです11代の憲宗に至っては中毒症状で異常な行動が目立つようになったそうで、水銀中毒にも見られるという急に短気になって分別もつかなくなり側近を意味もなく牢屋にいれるという行動が起きるようになりました。憲宗は部下にも恵まれ唐を中興させた皇帝でしたが最後は異常行動を重く見た部下の暗殺でした。


なぜ毒薬を飲んだのか?

これは中国の思想が関わってきます。神仙思想という仙人になって不老不死に至るという考えが中国にはありました。その中の煉丹術と言うのは不老不死の薬を作るというのがあります。その中に鉱物を煮て水溶液に変える技術がありました。金丹編という項目では黄金は火に入れても土の中に入れても消えることなく腐ることもないからこれを使えば不老不死になれると書かれています。

水銀なども同様に書かれており、特に辰砂という鉱物から作られる薬は鮮やかな赤をしていたことから血液につながると考えられ飲用されていたようです。水銀についても丹砂を加熱すると水銀が生じて硫黄を混ぜると丹砂に戻るという化学変化が起こるようで、当時の古代の人々はこれに永遠性を見出していたようです。この思想は唐代にあまりにも中毒死を起こした皇帝が多かったために宋の時代に入る頃には衰退していきました。

実はこの神仙思想は日本にも伝わっています弥生時代や古墳時代の墓には水銀朱などの赤を使った墓が九州や近畿地方など広い地域で作られています。魏志倭人伝によれば卑弥呼への贈り物にも金丹などが送られているようです。もしかすると古代日本でも水銀中毒になっていた人物がいるのかもしれません。